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朝日新聞デジタル「&」に掲載されました。
谷田半休(たにだ はんきゅう)
給湯流茶道 家元(仮)
1977年1月3日生まれ
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オフィスの給湯室を茶室に見立て、サラリーマンやOLを招いてお茶会を開く。これが、彼女が創立した「給湯流茶道」の流儀である。
「今でこそ茶道人口の大半を占めるのは比較的時間にゆとりのある女性ですが、利休の時代、茶の湯は武士が戦の合間にざっくばらんに話せる場という面もありました。現代のサムライといえば、社会で戦うビジネスマン。彼らこそお茶会をすべきなんです」
諸行無常のOL生活の中、歴史マンガ『へうげもの』の影響からそんなユニークな発想に至ったのが5年前。利休の茶室「待庵」がたった2畳の空間だったのならば、と会社の狭い給湯室で同僚と茶の湯を試したところ意外にも盛り上がったことから、この風変わりな流派は誕生した。給湯室に敷かれたヨガマットにスーツ姿の男女が鎮座し抹茶をたしなむ光景は一見シュールだが、実は細部に茶道の本質を突く意味が込められている。客人はまず身分の証しである刀(=IDカード)を外して茶室(=給湯室)に入る。茶会のテーマに合わせて亭主が用意する掛け軸や器は、出張先の地方やボロ市で見つけた雑貨が中心で、その背後にあるストーリーからわびさびを感じ取る、といった具合。取材時の掛け軸はアメリカで入手したヘルメットだった。
彼女が考える茶の湯のメリットは「抹茶はビタミン豊富で健康にいい」「同じカフェインなら、輸入のコーヒーより国産の抹茶で摂ったほうが日本の農家が潤う」などさまざまあるが、裏テーマは「視点を変えてみる面白さ」にある。
「茶道が女性の趣味にシフトしたのは、明治維新で武士がいなくなってしまったことから。絶やさないために、当時始まったばかりの女性教育に取り入れたそうです。そんなふうに、伝統文化の歴史をひもとくと意外な事実や物語が隠れているもの。それをみんなで発見していけたら面白いんじゃないかと思っていて。それに、最近はうつ病になる社会人が多いので、せめてこのお茶会では諸行無常をいい意味でとらえて『すべては時の運、おおらかになろうぜ』なんて伝えられたら。若者たちも飲みニケーションが嫌なら、ここで抹茶を一服どうよ?と」
肩書が(仮)なのは「伝統的な茶道も習っているけれど、なかなか作法が身につかないので」。敬意を払ったうえでのデフォルメなのだ。
「AERA」2014年12月15日号より
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今のニッポン、これからのニッポンを支えるキーパーソンを紹介する『21世紀をつくるニッポン人名鑑』から転載します。
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